出勤する人々

上昇し続ける求人倍率・・・
2018年1月の速報値は1.59倍という結果でした。

求人倍率とは・・・求人数 ÷ 求職者数 の値。この値が高いほど採用難であることを意味する。

求人倍率0.5倍・・・一人の求職者に対して求人が0.5件しかない。求職者から見れば採用されにくい状態だが、企業から見れば1件の求人に対して2人の応募があるので人材採用が簡単な状態。

求人倍率2倍・・・一人の求職者に対して求人が2件ある。求職者から見れば働き先が複数あるので採用されやすい状態、企業から見れば1件の求人に対して0.5人の応募しかないので採用難の状態。

過去に記録した最高求人倍率は、昭和48年(今から45年前) の1.76倍です。
現在の1.59倍は、この値に比べたらまだマシのように思えるのですが、時代背景や中身の違いを考慮するとある部分では当時よりもキツイ状況が浮かび上がります。

昭和48年の状況と比較

現在(平成30年)と違う点をいくつか挙げます。

  • 女性が現在ほど社会に出て働いていなかった。
  • 定年の年齢も早く、高齢者が現在ほど働いていなかった。
  • 終身雇用が当たり前であった。

これらの違いから考察すると、昭和48年当時の求職者というのは男性が大半でしかも若い人が中心であったと考えられます。
また会社員として働いているのは20歳から55歳ぐらいまでの男性がほとんどでした。

これに対して現在では、男性も女性も 老いも若いも みんな働いている状態です。「1億総活躍社会」なんて言葉を政府は使っていますしね。
求職者の層も昭和48年と比べると、当然幅広いわけです。

にも関わらず現在は人手不足に陥っています。45年前とはひっ迫度が違うように思えるのです。(私は45年前は生まれていないので、あくまで予想ですが)

現在の人手不足は社会の構造的問題

経済企画庁の「昭和48年 年次経済報告」 を読むと、昭和48年になぜ急に求人倍率が上がったのか理由が書かれていました。

いざなぎ景気(昭和40年11月から昭和45年7月まで続いた好景気)の終焉とともに、企業は新卒採用を縮小しました。とくに昭和46年3月卒~昭和48年3月卒にかけて。
昭和47年ごろから景気が徐々に回復傾向になり、労働需要が高まりました。しかしそれまで新卒採用を控えていた反動で人手不足感が強まりいっきに求人数が増加。
求人数が増えたため求職者はいっきに採用が決まり、求職者数自体が減少。そんな中、中小企業にも週休二日制が徐々に広まり少なくなった労働時間を埋めるためにさらに求人数は増加。求職者数が減っていたため求人倍率はよりいっそう上昇しました。

要約するとこんな感じだったのですが、いろいろな要件が重なってたまたま昭和48年にツケが回ってきた というのが私の感想です。

実際 昭和48年のあとは急激に求人倍率が低下しています。

求人倍率の推移
出典:総務省「労働力調査」, 厚生労働省「職業安定業務統計」

昭和48年はたまたま感が強かったのに対して、2010年ごろからは継続的に求人倍率が上昇しています。
2018年現在もこの人手不足はまだまだ続きそうな情勢ですし、あと2,3年でおさまりそうな様子もありません。まだまだ継続して上昇しそうな予感がします。

10年以上続くとなると これはもう景気どうこうではなく、社会の構造的問題で上昇しているように思われます。

考えられる原因としては、

  • 人口減少
  • 医療,介護,サービス業など人手を必要とする分野の需要拡大
  • パート,アルバイト割合の増加

などがあります。どれも簡単に変えられる構造ではないので、やはり求人倍率の上昇 つまり人手不足という状態が続きそうです。

1.59倍はあくまで平均値

現在の1.59倍という求人倍率ですが、これはもちろん産業全体の平均値です。
実際にはまったく人手不足ではない業種もありますし、深刻な人手不足に陥っている業種もあります。

業種・職種 有効求人倍率
保安・警備 7.73倍
建設・土木 4.15倍
接客・飲食 3.87倍
介護職 3.74倍
ドライバー 2.80倍
IT技術者 2.44倍
営業職 1.67倍
製造業 1.66倍
会計事務 0.74倍
一般事務 0.35倍

出典:厚生労働省「職業別一般職業紹介状況 平成29年9月」

事務職は希望者が多すぎて、ずっと求人倍率が1未満の状態が続いています。
一般事務なんて0.35倍です。希望者の3人に1人しか採用されない「狭き門」になっています。

給料が安かったり、肉体的にきつい業界はやはり不人気で求人倍率が高くなっているようです。
IT技術者は単に、そのスキルを持った人がまだまだ世の中に少ないことが原因のようです。

いずれにしても もっと雇用に流動性が生まれ、不人気業種にも人が流れるようになれば人手不足も改善されると思うのですが、資本主義経済において儲かる産業とそうでない産業の差が簡単に埋まるハズがありません。

介護ロボットを全面的に利用するなど、革新的な技術進歩がないとこの現状はなかなか変わらないのではないでしょうか。

嘆いていても始らない

「人手不足だ! ぜんぜん採用できない!」と嘆いてばかりいても、しかたがありません。
必要な人材はどうにかして確保しなければ、本当に人手不足倒産みたいな事態になってしまいます。

現在のような状況の中でも、上手に採用活動を行っている企業はたくさん存在します。
そしてその中には、予算がたくさんある大企業だけでなく、小さな会社も含まれます。

採用の上手な中小企業の事例をこれからどんどん紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

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