時代で意味が変わる「了解いたしました」問題。嘘マナー?最適解は?

nishiokanishioka

「了解」「時代」「マナー」などのカード

定期的にあがる話題の一つ。「了解いたしました。」のビジネス敬語にまつわる問題。
それについて最近、私はリモートワークが増えたこともあり「かしこまりました。」を積極的に使うようになりました――。

時代で変わる「了解いたしました」の正しい、正しくない

まず一般的に分かったことや引き受ける旨を相手に伝えるとき、目上の人に対しては「了解いたしました」ではなく「承知いたしました」が正しいとされています。
(ここでいう一般的とは、広く使用されているという意味)

ただインターネットでは「それ何週目の話?」というテーマかもしれませんが、いろんな意見があります。

意見をいくつか並べてみると、

  • 社会人として目上の人に「承知いたしました。」を使うのは当然
  • いろんな人がいるから、相手を不快にさせないように「承知しました」が無難
  • 昔はそういうマナーが無かった
  • ビジネス用。取引先には基本「承知いたしました」を使う
  • 関係性によっては先輩に「了解です!」とかはアリ。そういう言葉の選び方も含めてコミュニケーションが成り立つ職場もある
  • 「了解いたしました」は嘘マナー、謎マナーとして広がっている部分があるので、扱いが難しい
  • どちらも失礼ではない言葉として広まりつつあるので、その軋轢が無くなるのを願う

このようなところでしょうか。

この件について、マナーの成り立ちを調査している記事や、専門家の意見があります。

内容を以下にまとめました。

まずはマナーの成り立ちから

もともと「了解いたしました。」は、目上の人に対して使う言葉として「正しい・正しくない」という考えは世間に無いものでした。

参考サイト:
「了解しました」より「承知しました」が適切とされる理由と、その普及過程について

1980年~2010年ごろ
この時点では、ビジネスマナー全般に関しての書籍を数冊確認したところ「了解」を不適切としているものは見当たらない。

1990~2000年ごろ
神垣あゆみさんという方が「了解しました」に違和感を抱いたことが始まりとされている。

2007年
神垣さんが著書で「承知しました」という言葉を聞いて「感じがいいな」と思い、それから真似していると記載。

2009年~
神垣さんが次の著書で「了解しました」を不適切とする記載が見られる。別の著者でもそれにまつわるマナー本が出版される。マナー本が売れる。

2011年~
このようなマナーを特集した記事やブログなどが、インターネット上で拡散されるようになる。
「了解しましたは、マナー違反」といった内容だとPVが集まりやすい背景もあり、メディアで取り上げられることも多くなる。

そうして
「了解しました」は不適切な言葉として一般的に定着した。とのことです。

そこで専門家が意見します。

2016年

『三省堂国語辞典』編集委員の飯間浩明さんが、
「了解いたしました」は失礼な言葉ではない
「了解いたしました」と「いたしました」が入っていれば、敬語として十分
と明記しています。

このツイートがバズり、広く拡散されました。

そして現在。
目上の人に「了解いたしました」を使うことにおいて、

  • 不適切と認識している人
  • 使用しても問題ないと認識が変わった人
  • 敬語として十分でも、環境に合わせることが大事と考える人
  • 嘘マナーと認識している人

このように、どの情報をいつ目にしたか聞いたかによって認識が人それぞれ違う状態です。

ライブドアニュース(「目上の人への了解」否定で間抜けに見えるリスクが増大
)で取り上げられていますが、「了解いたしました」を間違った敬語として認識する人に対して、「嘘マナーを信じている人だ」と批判されるケースもあります。

まさに「了解いたしました」は、時代によって言葉の意味が変わっている1つの例です。

意味が変わると会話の運びにも違いが生じます。さまざまな意見を見聞きすると職場の環境によっては(コミュニケーションが難しくなるケースもあるな…)と感じることもあり、結局は状況によりけり。

相手に失礼があってはいけない…だからこそ時代に合わせることが必要で、一般的に「承知いたしました」が正しくあるけれど、逆に「承知は距離を感じる」と敬遠する目上の人もいる場合…なんとも悩ましい。新社会人にとっては上司と関係性も気づけていない状況では、なおさら大変かと思います。

ただ、私の答えとしては相手が不快な想いをしないように適切な言葉を使いたいという気持ち。

そうなると相手との関係性や性格による。会社による。話の流れや自然な会話かどうかによる。といったように現場に「合わせる」ことが人と気持ちよく会話する上で大切だと考えるので、多様性のある時代だからこそ、その場の正解を見つけるといった具合に落ち着きます。

ただ、ここ1年ほどで問題が出てきました。リモートワークです。

リモートワークにより、言葉の使い方に変化

リモートワーク中、パソコンの前で考える女性

社会のリモート化が進むことにより、普段顔を合わせて何気なくとっていたコミュニケーションの機会がグンと減った人は多いのではないでしょうか。
私もその1人。リモートワークで相手の表情が読み取れない中、頻繁にメールやチャットを使い文章で会話をしています。

だから、たとえば目上の人と文章で会話する時はどういう場合でも「承知しました。」で統一すれば問題ないのですが、文字だけを見ると、こんな具合になります。

「〇〇をお願いします。」
「承知しました。」
「〇〇をしてください。」
「承知しました。」

(あれ……こんなセリフが流行ったドラマがあったような……?)

これは極端な例ですが、少し業務的すぎるとも思います。ただでさえリモートでコミュニケーションの機会が減っている世の中なのに!

現代の言葉の意味としては「承知しました。」が良いのだろうけど、文章だけのやり取りでは、その瞬間に “相手が持っている言葉の意味” を想像しつつ、前後の文脈だけで自然に会話を運ぶには “最適解が分かりにくい”

だから私の場合は、

「かしこまりました。」

を多用することにしました。その程度でなにが変わるのだ!と突っ込みが入りそうですが。

ただ個人的には、「かしこまりました」は「承知しました」と比べて、状況により多少の意味に違いはあれど、目上の人に使っても不快感を与えることはないでしょう。
その上で「かしこまりました」は “ひらがな” で成り立っていることから、個人的に優しい印象もあります。

接客サービスでは、相手に緊張感を与えないように、柔らかく丁寧に「かしこまりました」が使用されることも多いですよね。

元気よく「かしこまりました!」と、たまにエクスクラメーションマーク(!)を付けて抑揚をつけるのもいいかもしれません。
結局は状況によりけりですが、今のところ「かしこまりました」を積極的に使っていて問題はありません。
今後も使い続けるでしょう。

さいごに。言葉の意味が時代で変わるのは良いこともあります。ただ「了解いたしました」のように摩擦が起きてしまう言葉に関しては「全国民で認識が共有されたらいいのに…!」というのが私の願いです。

それでは、また。

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