都内でサラリーマンをしているKさんの話を掲載
「辛い、仕事辞めたい。」そう思いながら365日、新卒から入社した会社でずっと僕は過ごしていました。
でも今では仕事に行くことに、少なくとも朝の出勤途中で吐くことは全くなくなったし、ほんの少し楽しいとさえも思うようになりました。
毎日辛かった
新卒で入社してから、ほとんどの毎日を日が変わるまで仕事をして、たまに用事があり早めに帰ろうものなら「仕事サボんな」ぐらいの勢いで、よく人格否定されるような罵声も浴びてきました。
1ヶ月休みがないときもありましたし、それでも社会はそんなものかと思い働いてきました。今思うと体を壊さなくて本当によかったですが。
そんなある日。ようやく休みがとれて夜中にかかっていたテレビをなんとなく眺めていたところ、すべてを捨てて外国を旅している男性のドキュメンタリーのようなものが視界に入りました。
気づいたら、僕はテレビの前で泣いていました。
ワーワー声をあげるわけでもなく、感情的になるでもなく。涙も拭かずに、ただ静かに。
ほとんど無に近い感覚で、頭の中で「会社を辞めよう」と思いました。
限界がきていたのでしょう。
辞める覚悟をした
後日、辞表を持って会社に出ました。
仕事が始まる中、いつものように上司から高圧的に「はい、これ今日やって。」と、書類を渡されました。
どう考えても今週も日が変わるまで帰れないような仕事量に、僕は残念な気持ちになったのを覚えています。
正直なところ、どこかで今日だけでも会社に期待して「辞めなくていい理由」を探していたと思います。
しかし、その勝手にしていた期待はむなしく現実は通常営業で、思わず自然と口から次の言葉が出ていました。
上司「はっ?」
僕「無理です。時間的に無理です。今日は定時で帰ります。」
上司「いや、仕事だろ?クビになりたいの?」
僕「クビで構いません。」
といった具合に。
唖然とする上司。震える僕。
もう少しいろんな言い方はあっただろうと今では反省していますが、もう限界を向かえていたのでしょう。
周りは空気を察し、静かでした。上司はそれ以降、何も言わず他の人に仕事を頼んでいました。
僕はというと、辞表をそのまま出して退職することを伝えてもよかったのですが、定時で帰りますといった手前、また僕の分の仕事をする社員に申し訳ない気持ちがあり、デスクにつきました。
そして、結局辞めはせずに、その日から僕は定時で帰ることになりました。
自分が変わったら周りが変わった
その日をきっかけに働き方や環境に様々な変化が起こりました。
定時で毎日帰り、休日出勤はしなくなったこと。
上司からの理不尽な言動が日を追うごとになくなっていったこと。
(最初の数日は会議室に呼び出されたり、「あいつ大丈夫か?」というヒッソリとした声が聞こえていましたが、それも「ピタっ」と止みました。)
日が変わるまでしていた仕事量は、上司の仕事を押し付けられていたり数字をあげるために使われていたんだなということ。(上司は帰るのが遅いだけで全然仕事をしていなかった)
会社の様々なブラックな面が明るみに出たことで、社内環境の改善に大きく問題が発展したこと。上層部ではいろいろあったみたいです。
1ヶ月2ヶ月3ヶ月と過ぎ…
それから同じように定時で帰る人が出てきました。「ちょっと嫁が~」「子供に熱が出て~」といった具合に。
そしてまた日は流れて、最初は申し訳なさそうに帰っていた人たちも、次第に定時が過ぎると普通に退社するようになりました。もちろん与えられた仕事はしっかりと定時までにこなして。
どうやら、あとあと他の社員が言っていたのですが、周りの目があり、遅い時間まで頑張っているアピールをしていた人もいたようです。
この数ヶ月の間に上司が周りに怒鳴り散らしたり、本当にいろんなことがありましたが、みんな考えがあり、そして不満を抱え、各々が動いたように思います。
終わりに
あれから5年が経ちました。
だいぶんと詳細な話は省いていますが、あのときの上司は端の方のデスクで静かにしていて、
僕はというと昇進したりと夢のあるようなことは特にありませんが、当時の苦しみに比べると見違えるように毎日が違います。
テレビを見て自然と笑うことも、休みが来ることに嬉しいと感じることも、当たり前と思う生活ができるようになりました。本当に、気持ちが楽です。
振り返ってみると、「社会人としてどうなの?」と思うところは多くあります。
いきなり定時で帰るといった行為は全体に迷惑をかけたに違いありません。
ほかにもダメだと思うことはあります。その点は反省と、今後仕事で返していくしかありません。
ただ僕が思うことは、自分の覚悟次第で働き方や状況が一変することがあるんだということです。
もし今、出勤時に毎日のように吐いたりと追い詰められている人がいたら、辞める覚悟をするだけで何かが自分の中で変わるかもしれません。
転職サイトを見たり、辞表を書いてみるのもいいと思います。
僕は「辞める」と真剣に意識したことで、世界が変わりました。
あなたが日々つらくてどうしようもなくなっている場合は、まずは自分に優しくしてあげてほしいです。
2015年4月16日。